北欧通信(コペンハーゲン支局)

中川財務・金融担当大臣が辞任しましたね! 私自身は「辞任では甘い、解任が適当ではないか」と思 いますが。デンマークでも、記者会見の様子が報道され ていますが完全に馬鹿にされた内容です。 オバマ大統領が、最初の訪問国としてクリントン長官を 日本に送り込んだ事を大々的に報道しているようですが、 ヨーロッパ・米国の金融危機に対する政策内容とその迅速 さを見ていると如何に日本の政治家(国会全体)が無能で あるかを見せ付けられているようです。 デンマークにも日本と同様に派遣会社があります。失業中 だから定職が見つかるまで派遣社員として働いている人も 結構居ます。福祉厚生が全て公的サービスなので差が無く、 デンマークには正規・非正規雇用という考え方がありません。 派遣の場合は、産休・病気休業・徴兵義務等である一定期間 仕事を休業する社員の代替として雇用されるケースが殆どで す。最初から期間限定の雇用契約で賃金も派遣会社から支 払われ、労働協定により職種ごとに定められている最低賃金 は保証されている制度です。派遣会社を通さずに、企業が求人 広告を出して直接期間限定で雇用するケースも多くあります。 労働組合の組織率が70%を越しているので当然の事ながら、 組合の発言権は強く労働者を守ってくれます。労働組合に加 盟する為の条件も現在就業中(要求期間なし)か、公的に認 められた教育機関で取得期間が最低18ヶ月以上の資格を 取ったばかりの卒業生となっています。 年齢制限は18歳から63歳と定められ、雇用保険にも加盟して いれば、過去3年間にトータルで52週間(1924時間分です)働 いていれば合計して4年間失業給付金が受け取れます。資格を 取ったばかりの新卒の人は、卒業一ヶ月後から失業給付金を受 け取れます。この場合は学校の勉強が就業と同等に扱われてい る為です。 このように失業しても受け皿がしっかりしている制度を確立してい るので生活基盤を無くすことなく再就職の可能性を探る事が出来 ます。今デンマークでも確実に金融危機の影響で失業率が上がっ てきています。これからが政治手腕が問われる難しい時期です。

労使間の闘いは永久なり 一昨年(2007年)、IT機器通販企業Shg社(従業員数99人)がストライキに突入した社員全員を解雇したことが新聞・テレビ等で報道された。 同社が倉庫の業務合理化と倉庫職員の負担軽減の改善策としてロボット導入計画を発表した直後、「ロボット導入は我々倉庫職員の人員整理が目的である」と倉庫職員が抗議。度重なる労使交渉にも拘わらず妥協に至らなかったので18人の倉庫職員がスト突入した。 すると会社側は「労働意欲の無い社員には辞めて頂く」と全員に解雇通告を行った。 現在、解雇処分を受けた社員達が解雇撤回を求め同社の玄関や駐車場でチラシ配布活動を続けている。抗議行動のリーダー、P.ハルボー氏は「これは私達18人の組合員の問題でない。全国の労働者に共通する」と語気を強くしている。 闘争中の組合員への経済的支援は『全国労働組合3F』が間接的に行っているそうである。 デンマークの労働者は昇給のみならず職場を失う危険が発生すると、労働協約違反で罰金が課せられるリスクがあっても抗議行動を開始する。一方、雇用者側も雇用者組合のアドバイスを参考にロックアウトや解雇で応戦する。 この様なデンマークの労使双方に共通する闘争精神は百年以上前の激しい労働争議の結果生まれた。 1896年5月、デンマークに雇用者組合『Arbejdsgiverforeningen af 1896』(現在のDA)が設立されデンマーク史上初の対労働組合組織が誕生した。 1899年春、ユーラン半島の一地域の家具職人組合が小規模のストライキに入った。誕生間もない雇用者組合が全国的ロックアウトで応戦、雇用者組合の初の腕試しの機会が訪れた。この時の雇用者組合の目的は労働組合解体であった。約4万人の労働者がロックアウトの犠牲になった。 労働組合のスト基金はあっけなく底を突き、収入を失った労働者達は売却可能な家財道具を処分しお金を工面した。『ロックアウト労働者経済的支援委員会』が設置された。『衣服サービス所』も設置され古着寄付の受付を開始した。家賃が払えない労働者が続出した。賃貸人を失い収入が激減した家主達はカンパ行為で労働者を支援した。 厳しい闘いを続ける労働組合と雇用者組合の双方に国外から支援が届いた。ドイツ、イギリス、USA,スウエーデン、ノルウエー、遠いアフリカから労使双方に支援が送られてきた。小王国デンマークの労働争議が世界を巻き込むほどまでに発展した。 政府の政策に不満を持つ農家からは食物が提供され合同食事会が頻繁に行われた。更に農家は貧困労働者家庭の子供を一時引き取りストライキ労働者を支援した。児童救済事務所も設置された。ストライキ・ロックアウトは100日を経過。急激に進行した多くの支援は『砂に水の如く』で労働者家庭は貧困と飢餓に苦しみ毎日子供が餓死する悲惨な状態に発展した。 1899年8月22日の報告書は1歳未満の児童死亡数36人、デンマーク史上最大を記録した。 1899年9月5日、労働組合と雇用者組合間にデンマーク史上初の労働協約が締結された。労働争議が始まって4ヵ月が経過していた。 これが現在のデンマーク労働市場憲法と呼ばれる『9月協定』である。 現在、デンマークの最低賃金は時給で92クローネ(約2000円)、週労働時間は37時間、 休暇法による休暇日数は年間、約6週間である。これは全国の労働者に共通する事である。基本的には年齢、性別、国籍に無関係で同資格=同仕事=同給料である。勿論、雇用者が有能な社員にプラスアルファーを付けるのは自由である。逆にそうしないと優秀な社員を失いかねない。デンマークの労働者の特徴は転職率の高いことであるからだ。 欧州委員会が発表した『労働力の流動性に関する調査報告書』(2006年2月)によるとデンマークの労働者の平均転職回数は6回、EU最高である。EU加盟国25カ国の平均転職回数は3.8回である。一年間に約三分の一の労働者が転職している計算になるが、 常により高い待遇の良い、自分の能力を発揮できる職場を求めて行動するチャンレジ精神が旺盛な労働者とも言える。同時に雇用者も常に有能な人材確保に余念がない。高い労働力の流通性が経済、企業、労働者に有益であると国民は認識しているのである。 日本では看護師及び介護士不足問題が深刻であると聞く。その主な原因が過酷な勤務体制と低い給料による離職者の増大であるとか。「それなら離職する前に改善を求めて交渉し闘うべき」とデンマークの労働者は言うであろう。 それらの日本の現状を見ると日本の労働者は「我々、労働者は雇用者無しで生活できない。」と未だに信じている気がする。 さらに日本の労働組合のリーダーも「企業無しに労働組合の存在はない」との迷信を払拭できないでいると感じる。 その証拠にここ数年の日本の春闘のあり方を見ると雇用者支援の非常に弱腰交渉が目立つ。 連合の春闘では 2000年は過去最低の要求額春闘 2001年は特段のテーマ無しの賃上げ春闘 2002年は労働組合が雇用維持春闘(過去最低の要求額) 2003年は統一要求を見送る成果主義春闘 2004年も同様の弱気で、ベア要求を見送る組合続出春闘 2005年もベア要求は大方の組合で見送春闘 2006年は産業界全体で5年ぶり賃金改善要求が見られた春闘だったが 2007年は「国際競争力」どうのこうのと基本給の引上げ抑制春闘 さて、2008年1月7日。連合の高木剛会長は「賃上げ要求を自粛せず積極的に交渉する」と決意を述べたがどうなる事か。

北欧通信 デンマーク 医療介護 無料! デンマークは医療も介護も無料 健全な毎日を人生最後の日まで送る為には医療保障は大切である。基礎教育から高等教育まで税負担のデンマークでは医療も無料保障されている。病気かなと感じたら直ぐに家庭医・開業専門医(歯科医は一部自己負担あり)に電話予約する。これら開業医は手術や入院設備を持たないので診察結果で病院診察及び手術が必要なれば病院(患者も病院自由に選択できる)が紹介される。病気での診察・治療・手術、更に退院後のリハビリも無料である。住宅改修等を含む在宅ケアも必要と認められれば年齢に関係なく無料受給できる。 この様にデンマーク社会保障制度の基本は税負担である。保険を掛ける能力のない国民重視の政策、全ての国民の最低限度の生活保障政策である。国民年金(65歳から)を例に取ると、この年金制度の目的は年齢的に労働不可能で労働収入が絶たれた国民への経済保障である。これは手当でなく労働所得と同じ扱いになり、この中から所得税を納める。国の世話になっているのではない。 年金総額(2008年)は月額約23万円(基礎額 約11万7000円、年金補助 約11万8000円)で一般労働者の給料に比較すれば少ないが、医療・介護・リハビリ等が税負担で保障されての金額である。 その観点から日本の福祉改革を見ると不可解な事が多すぎる。 一昨年、『障害者自立支援法』が施行された時に「障害者の人権を無視した制度」と多くの関係機関(者)から厳しく非難された。ところが今度は高齢者人権無視の『後期高齢者医療制度』が今年4月から施行される。この制度導入の理由は「後期高齢者の心身の特性に合わせた医療サービスを介護サービスと連携して提供する事でQOLを向上させる」と素晴らしい。だが、この保険料を75歳以上全ての高齢者の年金から毎月天引きする制度と聞いて驚いた。さらに高齢者は介護保険も負担しているそうだ。合計すると毎月1万円以上(全国平均額)の負担額、それもどの自治体に住むかで負担額が大きくも変わる。これでは高齢者は生き甲斐どころか生きる糧を失う。 「高齢者と若年者の世代間の負担の公平化を考慮した制度」と言うが先の長い若者と高齢者が平等負担とは乱暴過ぎる。それなら国民年金を一般労働者の平均賃金まで引き上げるきである。 物質社会の日本で建築物や工作機械などが老朽化すると直ぐに廃棄処分する傾向がある。だが、人間は機械や物ではない。日本の素晴らしい歴史や文化は先人が遺したものであり、現在の日本社会は今の高齢者が築いたのである。 この様な法律が成立する事に問題がある。欧州諸国で日本の政治家の高齢化が話題になっている。その高齢国会議員達が高齢者の人権を無視した法案を作成し、審議し、法制化したと言うのだから理解に苦しむ。 その前に空転国会を是正し税金の無駄を省く事が先決である。その為にも日本の国会にこそ成果主義を導入すべきだ。  日本では『100年安心の年金プラン』は閉鎖して間もない『小泉劇場』の演目の一つにあった。今後、100年間の経済発展・物価の変動・人口の増減・生活水準の向上を考慮すれば『100年安心政策』などありえない。予測通り『安心年金』は、新たに浮上した『年金記録問題』により一挙に『不安年金』に陥落した。

 「人名漢字の読めない職員が各自の判断でカタ仮名書きにした。」こんな理由を挙げること自体を恥と思わぬ社会保険庁の幼稚さには驚くばかりである。「納付記録が無いから支給しない」「納付証明をしろ」と開き直る態度には腹が立つ。安倍首相当時は全力を挙げて取り組むと約束したが、事後処理に掛かる莫大な費用の負担は?責任所在追及は?

 約40年前、「全ての高齢国民に生活保障をする」と謳う『国民皆年金』が導入されている。然し、納付しなければ受給できない、『国民皆年金』とは言えまい。社会保険庁職員は「国民皆年金なら、納付無しでも受給できる、帳簿整理は適当でいい」と高をくくっていたのか?

 デンマークの福祉の一部を紹介しよう。
* 税負担で納付義務が無く、65歳以上の全国民に保障されているデンマークの『国民年金』、『未納問題』『記録問題』『年金手帳』などは存在しない。
* 医療費・在宅介護/看護・補助器具・住宅改修等が自己負担なしで保障されている。
* 国民年金だけで暮らす低所得高齢者には家賃・視聴料・暖房費等への補助金があり、精神的ゆとりを持って生活を送る事ができる保障となっている。

 デンマークの高齢者活動センター・福祉施設を訪問すると、日本と同様に認知症や老人病等の不安を多々抱えているにもかかわらず、高齢者達が輝いて見える。
 基礎年金月額約11万円 + 補助年金月額約11万円
 税込み額としては決して多くは無いが医療費も介護保険も負担ゼロ、実際に自由に使える収入である。いざと言う時の心配が無い精神的にゆとりをもたらしてくれる制度である。

 第44回衆議員総選挙で圧勝した前小泉政権のたった3年で崩壊した『100年安心年金プラン』に加え今回の安倍政権は既に何度も期待を裏切っている。期待を担って大勝した政権でも失敗をすれば国民の厳しい判断が下るデンマーク。
 日本でも政府を批判するだけではなく、「そういう議員に投票した自分にも責任がある」と言う自覚を持ち、正しい判断で正しい議員を選出する高投票率の真の民主主義を期待する。そうならなければ、不可解は解消されないであろう。

デンマークの奨学支援制度 「デンマークの大学生は国からお金を貰って勉強している!」ある日本人の批判的な意見である。子供の教育費を親が負担するのは当然とする、日本人らしい発言である。 日本では、多くの施政者も国民も、日本国憲法に謳われている教育機会均等【教育基本法】を遵守していない。21世紀に入っても、家庭の経済的事情で進学を断念する若者が存在する。これは明らかに憲法違反である思う。これでは格差社会など是正できるはずが無い。 デンマークの教育政策の基本は「国の将来を担う子供の教育は、国の責任(税金)で行う」である。 18歳成人(選挙権等を得る)のこの国では、この時、親の扶養義務が法的に無くなる。成人とは子供が親元を離れて独立する事を意味する。 だが、そのまま学業を続ける子供にとって、大学までの学費が税負担で無料であっても、生活費が必要である。それ為に公的制度で学生支援が支給されるのである。 支援額は受給学生の年齢、親と同居か否かで決まる。親と別居(マンション、学生寮、下宿)する場合は支給額が倍以上になる。 経済的に余裕ある親が、マンションを購入し、それを子供に下宿させ、毎月のローン返済分を子供から家賃として取る事などは一般化している。 奨学支援額 【月額・単位クローネ】 年 齢 親と同居 親と別居 収 入 18-19歳 1 046(約2,4058円) 3 029(約6,9667円) 6 172(約141,956円)アルバイト等の収入は最高限度額を超えると支援額が減額される。 20歳以上 2 349(約5,4027円) 4 724(約108,652)

コペンハーゲン支局・M

Copyright (C)2007 Sineor Research Institute.All rights reserved.